シリコーン系消泡剤は、ポリシロキサンを主な活性物質として含む、特に表面張力の低い消泡剤液です。しかし、ポリシロキサンを選択する場合には、その構造が重要となります。例えば、シリコーン系表面添加剤として使用される比較的短鎖のポリシロキサンは、泡を安定化させますが、消泡効果はありません。ポリシロキサンが消泡効果を持つか、泡を安定化させるかは、媒体中の相溶性と溶解性に依存します。不相溶性で不溶性のポリシロキサンのみが消泡効果を持ちます。
この図は、純粋な(変性されていない)ポリジメチルシロキサンの状態を示しています。ここでのパラメータは、シリコーンの分子量または鎖長です。低分子量のものは泡を安定させ、高分子量のものはハジキを引き起こすほど不相溶性となり、さらにまったく不相溶性のハンマーフィニッシュ・シリコーンがあります。シリコーン系消泡剤に必要な「特定の不相溶性」は、シリコーン化学が提供する多様な可能性をもとに、さまざまな方法で達成することができます。
基本となるシリコーン鎖を異なる有機側鎖で変性することで、相溶性を制御することが可能になります。このようにして、ポリシロキサンはエチレンオキシドをベースとするポリエーテル鎖(R1)を用いることで親水性となり、一般に高極性系での相溶性が向上します。プロピレンオキシドをベースとするポリエーテルは、より疎水性の構造になります。ジメチルポリシロキサンの代わりに、メチルアルキルポリシロキサンを使用することも可能です。2番目のメチル基をより長いアルキル鎖(R2)に置き換えると、シリコーンの表面張力がより高くなります。一般的に、これは泡安定化効果の低下を意味します。
パーフルオロ有機修飾を用いた結果、いわゆるフッ素系消泡剤が生まれております。これらの製品は、非常に低い表面張力と高い消泡効果が特徴です。
水系用のシリコーン系消泡剤
水系用のシリコーン系消泡剤に関しては、一般的に疎水性の高いシリコンオイルのエマルションです。シリコン物質のため、鉱物油系消泡剤よりも高価であり、そのためより高品質な 塗料配合を想定しています。シリコーン系消泡剤は、疎水性固形分と組み合わせて消泡効果を高めることもできます。鉱物油系消泡剤と比較した場合のシリコン系消泡剤の主な利点は、高光沢系の光沢に影響を与えないことと、カラーペーストを使用した場合のその色受容性に影響を与えないことです。
% | |
シリコンオイル | 5-90 |
疎水性粒子 | 1-3 |
乳化剤 | 3-6 |
ポリグリコールおよび/または水 | 0-85 |
ハジキを生じない塗料を作るには、消泡剤を添加する際に十分なせん断力をかけることが重要です。非常に不相溶性の強い消泡剤はミルベースの早い段階で添加することが必要です。標準的な消泡剤 BYK‑024 のような相溶性の高い消泡剤の場合、レットダウンでの添加で十分です。高相溶性の消泡剤BYK‑025は、添加が非常に簡単であることが特徴で、カーテンコーターでカーテンが破れることなく容易に添加することができます。経済的なシリコン系消泡剤BYK‑1610およびBYK‑1615は、特に建築・装飾分野のエマルション塗料用に開発されました。この2つの製品は、エマルション塗料やプラスターで主に使用されている鉱物油系消泡剤の代替に適しています。BYK‑1723、BYK‑1724、BYK‑1611およびBYK‑1617は、特に欧州エコラベルの表示が必要な用途向けに開発されました。
溶剤系塗料用シリコーン系消泡剤
BYK‑070、BYK‑088およびBYK‑141は、より相溶性が高くなるように調整されています。BYK‑088の活性物質は、FDA§175.300に準拠しており、芳香族を含まない配合のために特別に設計されています。
本来のシリコーン系消泡剤に加えて、消泡特性を持つシリコーンのグループもあります。これは常にポリメチルアルキルシロキサンが関係しています。ポリメチルアルキルシロキサンは、泡の問題がそれほど大きくなく、高い表面スリップ性やべナードセル防止などの典型的なシリコン特性を塗料系に付与するために消泡効果が追加的に必要な場合に用いられます。消泡効果が不十分な場合は、シリコーン系消泡剤やポリマー系消泡剤を併用します。